私の中の図書館〜ライブラリー〜

読んだ本の内容をすぐに忘れてしまうので、ストーリーや読んで感じたことを書き留めたいと思います。

岩永竜一郎×ニキ・リンコ×藤家寛子「続々 自閉っこ、こういう風にできています!~自立のための環境づくり」( 2009)

続々自閉っ子、こういう風にできてます!―自立のための環境づくり

続々自閉っ子、こういう風にできてます!―自立のための環境づくり

 
最近、かなりのハイペースで本を読んでいる。
しかも、仕事関係の本ばかり。
学生時代から、読みたいと思っていて読めていなかった本読破!のオンパレードな毎日である。
要は、暇なんです。
でも、こんな機会に恵まれてとても光栄と思うようにした。
 
実は、よくタイトルを見ずに「あ!ニキ・リンコ!」と思い手に取り…読もうとしたときに気付いたが。
あれ、これ「自閉っ子、こういう風にできてます」の続続編じゃん!と一瞬テンションが下がる。
が、初めてこのシリーズを読む人でも読めちゃうし発見の多い本だった。
いやー、やっぱり支援者は自閉症当事者の本を読むべき!!
作業療法士の岩永先生とのディスカッション、そして定型と自閉を結ぶ案内役の浅見さんと当事者ニキさんとという3人の組み合わせがとてもいい!!
 
ここ23年は作業療法OT)にとても興味があり、発達障害というか発達や発達支援を語る上で絶対に大事な視点であり、外せない視点なのではないかと思うようになった。
初めて発達支援という点で同じ視点で語り合えるOTさんとも出会えた。
 
思えば、身体と心についての関心は前々からあった。それが、発達支援というより現実的な問題へと広がってきていると捉えるのが自然かもしれない。
 
この本には、ニキさんの身体感覚を作業療法の視点から掘り下げてみると実に興味深い。
固有受容覚の弱さや偏り、前庭覚の弱さ、感覚の過敏性、運動企画の問題などなど…
何度もこの本の中に出てくるが、自閉症理解とはウィングの3つ組とその周辺にある諸症状という理解だけでは十分ではない。
この本を読んでいると、例えば幼児期や学童期の子どもの家庭外の集団生活の場でいかに配慮や工夫をしても難しいことがあると思い知らされる。具体的な日常生活場面での困難さについて、この本を読みながら想像してみるのである。。


とかく、大人になると余計にこういった発達障害者の体感覚の違いの背景を知らなければ、例えば仕事が続きにくい発達障害者は“なまけ者”“わがまま”“体を鍛えればいい!”“続かないのはコミュニケーション能力が低いからだ”等々…で片付けられてしまうかもしれない。

しかし、この体感覚の偏りや過敏性等が日常生活の困難さに起因しているとしたら、やはりいわゆる精神論や力動的な精神療法だけではお手上げなのだ。
成人の自閉症者には自身の体の仕組みや感覚を知り、それにあった対処を考えていく視点を提供する・そして子どもには体感覚の不自由さの観点を伝えて適切な関わり方へと繋げていくことも我々支援者には必要な視点なんだと強く感じた。
 
この本を読んで、なるほどなと思ったことをいくつか挙げると…
●巡回支援に行ったときの先生方のニーズ
1段階目;「教師自身が困っているからどうにかしたい」
2段階目;「子どもが困っているからどうにかしたい」
3段階目;「子どもは何も訴えないが、支援が必要だろ思うからどうにかしたい」
という3段階に分かれるという話。
1段階目のニーズしか持たない先生は、授業妨害をする生徒への気づきはあるが、大人しい受動型の自閉症児の生徒・児への気づきがない→「うちのクラスは困っていません」=「私は困っていません」で終わってしまう。
 
●罰の捉え方について
・定型発達の子
「いけいないことをする」→「大人はその行動を起こした子どもを戒めようとする」(その戒めには、教育的意味合いが含まれている)→「罰として掃除をさせられる」
自閉症の子
「いけないことをする」→「掃除をする」
自閉症の子は他者の考えや意図となる、教育的意味に気付けない。そのため、“僕・私は怒られてばかり”“理由は、いけないことをしたから”ということのみになってしまいがち。すると、いけないことをして相手に謝るべきとき、謝らずに掃除をやり始めることになるかも。
 
●感覚の過敏性について
自閉症の人の感覚過敏
  1. 脳機能の違いによって知覚の違いがあること
  2. 感覚刺激について理解できないこと
  3. 情動が不安定であること
 
自閉症の人は、構造化されていない状況下で関係性が出来上がっていない相手が関わった場合は過敏反応を起こしやすくなる。Ex)見通しが持てない状況・刺激の様相が掴めない(どこから侵入している刺激なのかが分からない)・刺激を与えられることの意味が分からないとき…自閉症の人は不安になる。
 
●固有受容覚の弱さ
固有受容覚…筋肉や腱の中の受容器が脳に情報を伝えることで近くされる感覚で、身体各部の位置や動きをつかむときに必要な感覚
・固有受容覚の情報を掴みにくくなると…身体の動きがどうなっているのか分からなくなる。自分の身体の動きを目で見ていないと運動がうまくできなくなる。姿勢の保持が困難。
・あらゆる動作の場面で行われている動きの微調整には、固有受容覚が必要。
・固有受容覚と自我意識には関係がある…固有受容覚の弱さを持っている人は、自我意識も希薄な人が多い。そして、ボディ・イメージの問題を持っていることも。ということは、固有受容覚の弱さはアイデンティティの確立や形成に大きな影響があるかもしれないことが分かる。心の問題とのみ捉えるだけでは解決できないかもしれない。
 
●固有受容覚に働きかける
1.筋肉の緊張を高める→固有受容覚に刺激が強く入る体験をさせる
2.姿勢コントロール能力を高める→重力に抗して身体を垂直に維持しようとする抗重力筋の活動の増加(乗馬、ブランコやバランスボールの上でのバランスを取る、坂道を上る等の遊び)
3.ボディ・イメージを育て、協調運動をするための基礎を作る→手や脚に固有受容感覚がしっかりと入る活動を入れる(ぶら下がる・ジャンプする・引っ張る等筋肉に強く力を入れる活動を取り入れる)
 
※強い刺激が入る活動を情動の安定化の目的で使う場合もある(トランポリンを跳ぶ・噛みごたえのあるものを噛む・深部圧覚を刺激する等)