井原成男「ウィニコットと移行対象の発達心理学」
- 作者: 井原成男
- 出版社/メーカー: 福村出版
- 発売日: 2009/09
- メディア: ?行本-精装
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発達心理学をもう一度、最初から勉強し直そうと思って手にしたまず第一冊。
ドナルド・ウッズ・ウィニコット…イギリスの小児科医、精神科医。対象関係論。
ウィニコットといえば、移行対象やスクイッグルを思い浮かべる。
いわゆる、学生時代には心理用語としての知識や理解はあったが、乳幼児期の発達心理や母子関係という側面からのアプローチでの理解は乏しかった。
*移行対象…幼児(移行期と呼ばれる1~3歳頃)が肌身離さず持ち歩き、それがないと著しく不安になる、毛布やぬいぐるみなどの無生物を指します。移行対象は、絶対的依存から相対的依存への移行期に、分離不安に対する自己防衛として現れる。
移行対象のもつ3つの側面
- 子どもは、ブランケットであれぬいぐるみであれ、その対象を主観的には生命をもったものとして生き生きと感じている。心の中ではイメージの世界が膨らんでいるが、しかし同時に単なる物に過ぎない。移行対象はこうした主観性と客観性を同時に持っている。
- 移行対象が現れてくるのは、母子の分離が問題になってくるとき。子どもは分離不安に対する防衛手段として移行対象を創造する。
- いわば、子どもが意の向くままに自分の願望のままにふるまっていた(快楽原則に支配された)時期から、私たち大人たちと同じ世界へと歩みはじめる(現実原則に支配された)時期への移行期に現れるという側面を持っている。
●欧米では6~7割に出現。日本では、3割程度。
欧米は、自立を促す子育てをしており、日本は母子の接触や愛着を重視するところがあるため。
●移行対象≠指しゃぶり
①移行対象は、子どもの身体の一部ではなく、身体から離れた存在である。よりごっこ遊び的な世界(対人的な世界)へ広がっていく性質を持っている。“不安を静めるもの”
②指しゃぶりは、母の代理として口唇愛的な生理的快感を得られるもの。“楽しみを与えるもの”
●積極的(健康な)意味合いを持った移行対象は安定した母子関係の中で現れる。
●不安定な母子関係の中では、移行対象が固着したり、習癖化されていってしまう。
●発達的側面からみた移行対象の2段階
・一次的移行対象
- 1歳までに現れる
- 1年以上継続する
- 不安を静止するものである
- 哺乳瓶やオシャブリなど口唇愛的なものではない
- 子どもによって発見され、選ばれたものである
- 子ども自身あるいは母親の身体は含まれていない
・二次的移行対象
1~2歳の間に現れる柔らかい玩具である
*ブランケットや布団のような感覚的な物から、ぬいぐるみ等の対人的な物へ、そして、ペットのような人格的な物へと発達的に変化していく。
●移行対象の取り扱い
①取り上げてはいけない
②普通に考えるよりもいろいろな役割を持っている
③それとの遊び方、かかわり方の変化を見ていくと子どもの心の成長が分かる
その他のウィニコットの考え方
- good-enough mother(holding-抱っこ)
- 生き残ること
- Mother infant unit
- Concern
- 一人でいる能力
- 創造性‐遊ぶこと
- 依存と自立…絶対的依存-相対的依存
- 中間領域
- 幻想と脱錯覚
1)good-enough mother(holding-抱っこ)
ほどよい母親、適切な母親等と訳される。母親の機能には①holding②handling③object-presentingがある。
母親には子どもを抱え込み、ささえる環境としての役割がある。
6)創造性‐遊ぶこと
本当の意味で遊べる人は、また創造的な人でもある。
7)ウィニコットは、依存を①絶対的な依存②相対的依存③自立へ向かう段階に分けている。
8)主観的な世界と客観的な世界とのつなぐ=中間領域。この中間領域に移行対象が現れる。
●ウィニコットとメラニー・クライン
ウィニコットは、クラインから訓練を受けたが、クラインの①羨望②妄想-分裂ポジション③死の本能というコンセントを受け入れられなかった。クライン学派からは破門されるが、クライン自身からは拒否されていない。